プロフィール
- 片亀 光
- 群馬県地球温暖化防止活動センター センター長
生い立ち、創業のヒストリー
-
- 公害問題の現実を知る
- 中学一年生の美術の授業で『公害問題のポスターを描く』という課題に取り組んだ片亀さん。「公害って何だろう?」という気持ちから新聞のスクラップを始めると、ノートは約半月ほどで大小さまざまな公害問題の記事で一杯に!そこから公害問題へ目を向け始め、「将来は公害問題に関わる仕事をしよう」と志しました。
-
- 学生運動を経験、身近な公害の解決策を探る
- 特に気になっていたのは「食品公害」。有吉佐和子著の『複合汚染』にも影響を受け、エコロジーや生態学から公害・環境問題へのアプローチを考えました。筑波大学にて土壌微生物学を専攻し、学業の傍ら「霞ヶ浦の水質浄化運動」に学生ボランティアとして参加。各河川を周り、簡易テストを行うなど、実地で身近な公害問題を学びました。
-
- 同じ目的を持つ仲間とのつながりに学ぶ
- 学生時代の片亀さんへ影響を与えた人物は、「土浦の自然を守る会」代表の奥井登美子さん。地域コミュニティの核となる人物である彼女は「霞ヶ浦を綺麗にしたい想いが一緒なら、どんなに違う人同士でも協力できる」というオープンマインドな考え方を持っていました。政治的主張や利害関係を超えたつながりがある土浦地域の在り方は、片亀さんの視界を大きく拓きます。昭和56年、市民運動と請願の結果、霞ヶ浦は琵琶湖に次いで日本で二例目の「富栄養化防止条例」が制定されることとなりました。
-
- 環境問題を“自分ごと”として捉える
- 作家であり医師である佐賀純一さんの生き方も、片亀さんに大きな影響を与えました。霞ヶ浦周辺へ半導体工場が進出する計画が立ち上がった際、佐賀さんは病院が休診となる木曜日の午後を使って国会図書館に通いつめ、工場進出問題へ工場排水を出さない浄化システムの導入提案を行いました。それにより、地域の環境は汚染されることなく、工場進出による雇用が創出されることに!問題解決に取り組む佐賀さんの熱意と姿勢は、今も片亀さんの気持ちを奮い立たせてくれる記憶となっています。
-
- 生活協同組合での15年間と脱原発
- 土壌微生物学から農業経済学へと転部し、地元群馬県の生活協同組合にて15年間勤務。無農薬や有機栽培の食品普及に取り組みました。しかし、1986年にチェルノブイリ原発事故が発生。日本国内の農業も深刻な影響を受け、「脱原発」の必要性を実感したと言います。当時「日本の電力の3割は原子力発電です」と言われていたことから、片亀さんは「自身の生活の中でできる節電」へ目を向け始めました。
-
- 省エネ・節電から始まった地球温暖化防止活動
- 「15年間で自宅で使う電力は半分になりました」と片亀さん。原発問題から始まった省エネ・節電は、1997年に第3回気候変動枠組条約締約国会議(COP3)が開かれてから「地球温暖化防止活動」として認知され始めます。2022年のCOP27において「私たちはアクセルを踏んだまま、気候変動地獄へ向かう高速道路を走っている――」と述べたアントニオ・グテーレス国連事務総長の言葉は記憶に新しいものです。今後は、公害から始まり環境問題を考えてきた50年間の取り組みをステップアップさせ、多くの人が環境問題を“自分ごと”として捉える社会づくりを目指して活動を進めていきます。
活動詳細
-
- ①CO2削減の取り組み
-
日本では、CO2削減や省エネ活動に対し「我慢する」イメージを持っている人が多くいます。そこで当団体では「環境良し、家計良し、健康良し」という“三方良し”のCO2削減方法の普及活動に取り組んでいます。全国一マイカー保有率の高い群馬県ならではの「公共交通機関を活用したスマートムーブツアー企画」や環境GS*の取得支援などを行っています。
*群馬県環境GS認定制度
環境GS(ぐんまスタンダード)認定制度は、県内事業者が温室効果ガスを持続的に削減するために「環境マネジメントシステム」を整備し、組織的に運用することを支援する仕組みです。
-
- ②再生可能エネルギーや自然エネルギー普及に向けた取り組み
- 「うちエコ診断」を通じた手軽に取り組める省エネ・節電活動の紹介や、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)実現に向けた住宅リフォーム時のアドバイスを実施しています。片亀センター長自らの家で実践してきた“手の届くゼロエネルギー住宅“について、具体的な事例を交えてわかりやすくお伝えしています。
-
- ③CO2吸収の取り組み
- 全国各地で問題となっている「耕作放棄地問題」の解決に向け、群馬県渋川市の農家と協働し「里地里山の再生事業」に取り組んでいます。農家の離農者を減らし就農者を増やすきっかけづくりとして、年間を通じた農作業手伝いのボランティアを募集。地域内だけでなく、都内の広域避難区域に指定された地域住民へと声を掛け、災害時に協力し合えるつながり作りの場としても計画しています。竹林を活用した竹製品開発や竹炭による土壌改良・炭素の固定化も将来的に実施していく予定です。
団体で実現したい未来
近年、環境問題の場では「普及啓発」よりも、「実質的な削減効果」を求める声が多く聞かれます。過去の国会質問では環境省に対し「環境教育をやって、一体何トンのCO2が減るのか?」といった衝撃的な質問が飛び出したこともありました。確かに、普及啓発の効果は見えづらく、まるで“畑の土を耕す”ような仕事です。しかし、一人一人の意識を目覚めさせていくことが、将来の“収穫”につながります。
そのことを裏付けてくれるのは、70年代から環境教育に力を入れているドイツの事例や現在のZ世代の環境意識ではないでしょうか。日本では昔から「子どもエコクラブ」という活動がありますが、群馬県内でもボランティアによって活発に運営されているクラブがあります。参加者は小学校6年生くらいまでの子どもたち。かつて「子ども時代にクラブ活動に参加していた大人たち」がサポーターとして関わりながら、子どもたちの成長や環境意識の育成に取り組んでいます。その他にも、昨今のSDGsブームの中で、県内の大学生による環境系サークルの立ち上げや環境教育のリレー講座が行われるなど、若い世代が興味を持って活動し始めています。当団体は中間支援組織として、そうした未来に向けて活動するプレイヤー同士をつなぎ、県内全域の活動を活発化させることを目標としています。
- Writer Comment
- センター長である片亀さんは「私は2050年には91歳を迎えます。これまでの気候変動・地球温暖化防止の取り組みが、どのような未来の地球・日本・群馬を作るのか――シニア世代としての“見届ける責任”を意識しながら、若い世代に顔向けできるような生き方・活動をしていきたいと思っています」とコメント。世代間ギャップが生まれないよう、幅広い世代の方とコミュニケーションをとりながら、様々な人々と手を携えて活動していきたいとお話しくださいました。
団体について
- 群馬県地球温暖化防止活動推進センター(NPO法人地球温暖化防止ぐんま県民会議)
-
-
- 住所
- 群馬県前橋市大渡町1-10-7 群馬県公社総合ビル6階
-
- ホームページ
- http://www.gccca.jp/
-